故ダイアナ妃は、離婚前だった1995年にBBC番組『パノラマ』のインタビューに応じ、
その中で赤裸々な暴露や告白をしました。
私はこのインタビューをちゃんと見た覚えがありませんでしたが、今週になってやっと、何故かわかりました。
インタビューが放映されたのは、1995年11月20日――ムスメの誕生の2日後。
緊急帝王切開で出産した私は、集中治療室でまだぐっすり眠っていたからだったんですねぇ。(遠い目・・・)
まぁそんなことはどうでもいいんですが、このインタビューがきっかけで、ダイアナ妃とチャールズ皇太子の離婚が
一気に加速したと言われています。
インタビューは大きな話題になり、ダイアナ妃をインタビューしたBBCのマーティン・バシール記者(Martin Bashir)は、
数々の賞を受賞し一気に知名度を高めました。
しかしながら、インタビュー放映から25周年だった去年11月。
インタビューを取り巻く状況に何らかの不正行為があった可能性を調べるため、BBCは、
「元最高裁判事のジョン・ダイソン卿(下画像)が率いるチームが独立調査に入る」ことを発表しました。
育児に追われていたのでしょう、私は全然知りませんでしたが、インタビューが放映されて間もなくから、
「バシール記者は、インタビューを取り付けるために銀行文書を偽造していた」ことが、複数の新聞社で取り沙汰されていたそうです。
そのためインタビューの翌年1996年に、BBCは内部調査しました。問いただされたバシール記者は、偽造は認めたものの、
「あれは馬鹿な行為だった」「偽造文書は一切誰にも見せていない」と、インタビューを取り付けるために文書を使ったことは
三度にわたって否定。四度目にやっと、見せたことを認めました。が、それはBBCの中間に位置する重役たちによってもみ消され、
経営トップの耳には入らなかったというか、トップは「不正行為は何もなかった」という下からの報告を
そのまま信じてそれ以上は追及しませんでした。
その辺りは、数日前の、ダイアナ妃インタビューと同じ番組『パノラマ』で、ダイソン卿チームの
独立調査の結果として報告されました。
番組の中で、1995年8月31日に「バシール記者に会った」ことを話す、ダイアナ妃の弟スペンサー伯爵。
伯爵によると、バシール記者は、伯爵の警備チームのトップであるアラン・ウォラーをはじめとする
身近な人々が、「多額の報酬と引き換えにメディアのためスパイをしている」と警告し、
証拠として銀行明細の文書を示したそうです。
アラン・ウォラー氏(下左画像はスペンサー伯爵と)。
文書を偽造し伯爵の周囲の人々を告発したのは、伯爵の信頼を得てダイアナ妃への足がかりをつくるためでした。
1995年9月、スペンサー伯爵はバシール記者をダイアナ妃に紹介しました。
が、何となく腑におちないものも感じたので、「注意するよう」ダイアナ妃に警告したそうです。
ところが伯爵の知らぬ間に、ダイアナ妃はバシール記者とのインタビューに応じていました。
11月5日、バシール記者と撮影クルーが、修理業者を装ってケンジントン宮殿に入り、例のインタビューを録画。
インタビューは11月20日に放映されました。
どういう経緯でかはわかりませんが、インタビュー放映の翌月、ダイアナ妃はバシール記者宛に、手書きで
書簡をしたためました。その中でダイアナ妃は、バシール記者から何の文書も見せられなかったこと、
自分が知らなかった情報は何も受け取らなかったこと、パノラマ・インタビューにはいかなる不適切な
プレッシャーも受けずに同意したこと、それに関して何の後悔もしていないことを明らかにしています。
'December 22, 1995.
Martin Bashir did not show me any documents, nor give me any information that I was not previously aware of.
I consented to the interview on Panorama without any undue pressure and have no regrets concerning the matter.
Diana.'
バシール記者宛になっているところから、バシール記者本人に依頼されたものと思われます。
こんな書簡をダイアナ妃にしたためてもらったということは、バシール記者は、将来問題になった場合に備えていたのかも。
独立調査の結果、バシール記者とBBCの評判は地に堕ちました。
BBCはダイアナ元妃インタビューで「欺いた」 調査委が報告書公表 (BBC NEWS JAPAN)
英BBC、故ダイアナ妃番組で謝罪 虚偽明細で取材交渉 (日本経済新聞)
ダイアナ元妃は騙され利用された? 捏造がなくとも取材を受けたと元BBC記者は反論 (ニューズウィーク日本版)
さてウィリアム王子は、独立調査の報告を受けて「あのインタビューがなかったら、母はまだ生きていたはず」と発言しました。
が・・・ダイアナ妃ファンといえる私ですが、それは疑問に思います。
離婚はもう避けられない状況になっていたし、ダイアナ妃は誰かに脅されて赤裸々な発言をしたわけではありません。
離婚後自由の身になって、あまり良い噂のないドディ・アルファイド氏と交際し、飲酒運転手の車で事故死したのは、
すべて自分が選択してきたことの、不運な結果でした。
もちろん、あのインタビューがあのタイミングで放映されなかったら、時系列が少しずつずれて、
事故死は免れていたかもしれません。
でも同時に、時系列がずれたことにより、別のときに別の場所で事故に遭っていたかもしれません。
ダイアナ妃の早すぎる死は本当に悲しく痛ましく残念な出来事でしたが、それをインタビューのせいにしてしまうことには
無理があると、私は思います。
まだ未成年の二人の子供の母親だったのだから、自分の命を守るために、
せめてダイアナ妃が、シートベルトをしてくれていたら・・・
そうすれば、もしかしたら、助かっていたかもしれないのに・・・。
バシール記者ですが、聡明で有能な記者だと思っていたので、残念です。
数多いるジャーナリストの中で抜きん出たいという野望に駆られて、不正行為にはしったのでしょう。
バシール記者は今月14日付で、「健康上の理由」のためBBCを退職しました。
独立調査が完了したタイミングで・・・本当の理由は見え見えですね。
でも銀行明細の捏造って、不法行為にはならないのでしょうか?
スパイを働いていたという汚名を着せられた人々にとっては、名誉毀損にならないのでしょうか?
バシール氏(58歳)は何らかの懲罰を受けるべきだと思うんですけど。
多額の年金をもらって悠々自適の隠居生活に入るなんて、赦せません!
バシール氏(Martin Bashir)についてはもうひとつけしからん話が出てきたので、それは次回に。