イギリスが世界に誇る?覆面ストリート・アーティスト、バンクシー。 彼はブリストル出身のようです。
ホームタウンで 「親切な地元の人々に何かお返しをしたい」 と、2009年6月にブリストル博物館で
12週間の展示会 Banksy Versus Bristol Museum を開催(入場無料)。
世界中から30万人(!)を超えるファンが訪れ、地元に1千万ポンド(18億円)の経済効果をもたらしたそうです。
(バンクシーいわく: 「自分の作品の除去のためでなく設置のために税金が使われたのは、これが初めて。」 )
そしてバンクシーの地元へのお返し第2弾が、現在進行中。
8月22日(土)にブリストルからすぐの海辺の観光地ウェストン‐スーパー‐メア(Weston-Super-Mare)に、
子供に向かない憂園地 “Dismaland” が、5週間の期間限定でオープン!
Dismaland は明らかに、 dismal (陰気な、憂うつな、荒涼たる)に land をつなげた Disneyland のもじり。
しかも Amusement Park (遊園地)ではなく Bemusement (当惑、混乱) Park と、率直に謳っちゃってます。
バンクシー本人によると、同憂園地は 「子供には不適切な家族向けテーマパーク」。
入場するには、やけに厳重なセキュリティー・チェックをパスしなければなりません。
設備のほとんどが学芸会の小道具(か、それ以下)みたいですが。
入場すると、10年前に閉園された、荒れ果てた遊園地のような光景に迎えられます。
池にはまって棄て去られた Police Riot Van (対暴動警察ヴァン、向こう側になぜか滑り台つき)と、へんてこなピクニック・テーブル。
一見まともなメリーゴーランドでは、馬が食肉にされつつあります。
これは以前 「出来合い食品には馬肉が混じっている」 とのスキャンダラスなニュースがあったため、それを茶化しているのでしょう。
原油流出事故を風刺した、“MUCK (ドロドロ) からアヒルを釣ろう” ゲーム。
遠隔操作できるボートは、 ・・・・・ 難民を満載しています。
ご丁寧にも、溺死体までちゃんと浮かんでいます。 これを見て不快感や憤りを感じる人もいるでしょうが、私はOK。
こうして話題になることで、難民よりずっと恵まれた立場にある私たちが、彼らのことを考える機会をふたたび与えられるのですから。
向こうのベンチに座っている老婦人は、この夏ニュースになった “凶暴化する野鳥たち” (この場合はカモメ)に襲われています。
バンクシーは60名のアーティストに参加を依頼し、17ヶ国の58名から協力を得ました。
下左の "Big Rig Jig" は Mike Ross というアメリカ人アーティストの有名な作品だそうです。
下右のスラムを幸せそうに飛び回るディズニーアニメ風の鳥たちが、ものすごい違和感で皮肉たっぷり。
憂園地の一角には、協力してくれたアーティストたちの作品の屋内展示があるようです。
以前にもコラボしたことのあるデミアン・ハーストの作品は、大きなビーチボールが 鋭利な切先の上に浮いているというもの。
なぜか武装グループに混じってしまって目を白黒させるクッキー・モンスターという、両極的存在が一緒にされた絵も面白い。
核爆弾によるキノコ雲は、子供用の “ツリーハウス” (ツリーじゃないけど)になっているんですね。
ゴーカート乗り場を回っている、不気味な先客。 シャチくんとトレーナーは、映画 『ブラックフィッシュ』 を彷彿とさせます。
バス停によくある広告板。 £5(¥900)で “広告スペース侵入キット” を買えば、
中味を好みの広告に代えることができるそうです。 ・・・って、それ、違法じゃないの???
シンデレラ城・・・・・ みたいな、火事による損傷の激しいうらぶれたお城。
入口手前のマーメイドは歪んじゃってます。 “本物のプリンセス体験ができる!” という内部に入ってみましょう。
交通事故死したシンデレラ姫が、パパラッチされています・・・・・ なるほど、これも現実・・・・・。
いまやパパラッチだけでなく、通りがかりの一般市民ですら写真を撮ってSNに流布する時代ですもんね。
園内のあちこちに、面白い掲示があるようです。 このピクニック・テーブルは、なぜトイレット・ペーパーのデザインでなければならなかったのか?
お金が足りなくなった子供のため、親切なことに 『おこづかいローン』 まであります。 金利5000%だけど。
園内のスタッフは 「できるだけ陰鬱に、できるだけ役立たずに」 接客するよう指導されているそうです。
「わ~い、顔はめがあった! ・・・無地のセルフィー(自分撮り)用と、武装テロリストだけど・・・。」
“無料ホットドッグ: 中の肉が何の動物のものか当てられた人に”
“ I AM IMBECILE (私は愚鈍です)” 風船と、片づけられつつあるキャメロン首相。
焼け焦げたアイスクリーム・ヴァンは、2009年の展示会作品をリサイクルしたものですね。 よい心がけです。
夏の海岸の風物詩 『パンチとジュディ』 人形劇もあるものの・・・ ひょっとして、あるのはボックスだけ?
パンフレットも、一応あるみたい。 バンクシーのネズミは、私結構好きです。 Tシャツ欲しいな。
子供向けシリアルにも “Your Dreams Are My Nightmares” というネガティブなメッセージが。
連日大人気の Dismaland。 『パンチ&ジュディ』、内容はともかくちゃんと上演?されているようですね。
当初はネットで入場券を予約できるということでしたが、まもなくサイトがクラッシュしてしまい、
やがて 「あのサイトはウソで、予約しようとした人が味わったイライラも落胆も Dismaland が提供するみじめさの一部」 というウワサが。
観覧車も、ちゃんと動くんですね。 暗くなってライトアップすれば、それなりにキレイ
一般公開に先駆け、まず8月21日(金)には地元民が無料で招待されたそうです。
バンクシーがローカル新聞に 『先着1000名までの無料招待券』 を載せたので。 粋だねぇ~!
当日は長蛇の列ができたようです。 その後も連日、大盛況。
入場は一日4000人までで、入場料は5歳未満無料、5歳以上は一人£3(¥550、安っ!)だそうです。
昨日職場で話題になったとき、誰かが 「入場は4時間待ち」 と言っていました。
片道一時間で行ける距離なので行ってみたい気もするけど、4時間待ちする根性はないから、あきらめよう。
トレイラーを見てガマンするとしよう。
Dismaland (ディズマランド)は 『バンクシーとアーティスト仲間たちの青空ギャラリー』 と言っていいのでは?
会場は2000年に閉鎖されて以来打ち棄てられていた、元屋外プール Tropicana。
1937年にオープンした当時は世界最大の屋外プールだったそうですが、利用者減少のため閉鎖に追い込まれました。
その後、再開発あるいは撤去の案が持ち上がっては消え・・・ を繰り返して15年。
「子供の頃トロピカーナが大好きだったんだ。 そこを会場に使わせてもらえるのは、本当に名誉なことだよ。」 と、バンクシー。
ニュース記事へのリンクはいずれ無効になるかもしれないので、行けない自分のためここに案内図を保存しておこうっと。
わぁ~、ほんと浜辺にあるんだ、この会場。
この期間限定イベントがウェストンにもたらす経済効果は、700万ポンド(12億円強)と試算されています。
すご~い、バンクシー効果!
昔からテーマ・パークには興味のない私ですが、Dismaland には心惹かれます
5週間じゃなく、せめて5ヶ月くらいオープンしてくれたら、空いていそうな時期を見計らって行ってみるんだけどなぁ~・・・ 残念。
《 オマケ: 私の以前の記事 『チェルトナムのバンクシー』 はこちらでどうぞ。 》