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Channel: ハナママゴンの雑記帳
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ウスターシャー・ソースのはなし

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ときどき無性に食べたくなる、自己流チーズ・オン・トースト。台としてしっかりするので、私はパンの耳を使うのが特に好きです。

カロリーカットのため何も塗らずにまず耳側をグリルし、焼けたら裏返して輪切りにしたプチトマトを並べ、細くスライスしておいた

チェダーチーズを散らし、グリルに戻し、チーズが溶けて焦げ始めたらお皿に移し、たっぷりと振りかけるのは・・・ ウスターシャー・ソース、

短縮するとウスター・ソース

 

ものぐさ主婦のお手軽昼ごはんです。在英も4半世紀を超えたので日本のウスター・ソースの味ももはやうろ覚えですが、それに実家ではもっぱらとんかつソースが好まれてウスター・ソースや中濃ソースはめったにお目にかからなかったのですが、イギリスのウスター(シャー)・ソースは日本のウスター・ソースとはかなり違うように思います。やや酸味があってスパイシーで、舌にピリッときて。でもそこが、甘党で辛いものは苦手な私にさえ、たまらない~!

中濃・とんかつ・ウスターソース・・・ この3つの違いって?

ウスター?中濃?とんかつ?何が違うの!?ソースの種類の違いとは

そんなことを思いつつ折にふれてチーズ・オン・トーストを食べていましたが、私がときどき覗きにいくデイリーポータルZでつい先日面白い記事をやってくれたので、まずはそれをお読みください。

 ウスターソース発祥の地でコロッケを食べる

記事を読んで(ほぉ~、ウスターソースはごく少数しかスーパーに並んでないのか)と思い、近所のスーパー・テスコで確認してみました。なるほど、確かに。最下段中央にあるオレンジ色のラベルです。

 

 一応中瓶小瓶があるものの、なんとなく寂しい処遇・・・ でもその一番大きな理由は、ウスター・ソースが長持ちするものだからかも。戸棚の中に常温で保存して、5年は大丈夫だそうですよ。我家でもチーズ・オン・トーストに使うくらいだから、1本買えば一年以上もつかも。

ウスターソースの中で一番有名、というよりもはやこれしかないんじゃないか、的なブランドは、リー氏とペリンズ氏が共同で開発したリー&ペリンズ。(日本語版ウィキでは『リーペリン・ソース』と呼ばれていますが。)

リー&ペリンズのすぐ上には、スーパー・ブランドのウスター・ソースが隠れるようにして並んでいました。どんな味だろう。リー&ペリンズより安いから、一度試しに使ってみようかな。

ついでながら。私がイギリスに来た26年前と比べ、和食もかなり進出してきてくれて頼もしいです。カツカレー・ペーストってどんな味なんだろ。普通のカレーと違うのかな。一度試してみようかな。

もうすぐバレンタインなので、それっぽいお菓子が目につきました。イギリスではバレンタイン=チョコレートではないので、バラエティーに富んだギフト商品が並んでいます。しかも嬉しいことに、イギリスではどちらかというと、男性から女性にプレゼントとともに愛を告げる日だし!

 

話をウスター・ソースに戻します。下左がジョン・ウィーリー・リー(John Wheeley Lea, 1791-1874)、下右がウィリアム・ヘンリー・ペリンズ(William Henry Perrins, 1793–1867)。

   

 時は1830年代の始め。総督の任務を終えベンガルからウスターに帰還したご当地貴族のマーカス・サンディス卿は、赴任先で手に入れたソースのレシピを再現することを熱望し、2人の薬剤師リーとペリンズにソースの製造を依頼します。ソースを試作した2人でしたが、その出来に大いに失望し、樽詰めのソースは地下室にしまい込まれて埃をかぶりました。

 なんだか高級品のイメージで宣伝されるリー&ペリンズのソース

  数年後に放置されていたソースを見つけた2人が「棄てる前に念のため」味見してみたところ、あらまぁ嬉しいオドロキ! 歳月を経て発酵熟成したソースは、独特の風味と深い味わいをもつとても美味しいソースになっていたのです。瓶詰めにされたソースは宣伝も必要とせぬまままたたく間に人気を博し、数年後にはヨーロッパ中に広まりました。ちなみにリー&ペリンズの瓶が通常の四角ではなく丸型なのは、リーとペリンズが薬剤師だったことに由来するそうです。当時の薬瓶は丸型でしたから。

やっぱり高級品のイメージ。リッチそうな紳士が卓上にボトルを置いている様、あるいはソースを注いでいる様は、調味料というより高級酒。

 1839年にニューヨークの実業家ジョン・ダンカンが、試しに少数のリー&ペリンズを輸入。数年後にはダンカンは、需要に応えるため大量に輸入することになりました。リー&ペリンズは当時のアメリカでは唯一の、商品化された瓶詰調味料だったそうです。やがてダンカンはアメリカに製造プラントを建設し、オリジナルのレシピに忠実に従ってリー&ペリンズを製造するようになります。

淑女だって負けていません。リー&ペリンズが好きなのは紳士だけではないのです。

 リー&ペリンズのウスター・ソースのレシピは2世紀近く後の現在も企業のトップ・シークレットで、限られた小数の人間しかそのレシピを知りません。

紳士淑女に続くのは、良家のお坊ちゃんお嬢ちゃん。でもこれスパイシーすぎると思うから、犬にあげるのはやめようね!

 

  リー&ペリンズのウスター・ソースはイギリスでは主にチーズ・オン・トーストに使われますが、スペインではサラダに。香港ではディップと炒めものと牛肉のマリネに。カナダとアメリカではハンバーグのレシピに使われるそうです。

 スープにも、魚にも、肉にも、グレーヴィーにも、野鳥にも、サラダにも、ほぼ何にでも。・・・まるで調味料の万能選手。

 ロースト・ラムにもロブスターにも。そういえば少し前にCMが流れていました。パスタ用のミートソースを作っていた女性が、間違ってリー&ペリンズを振り入れてしまうんです。ところが皆「おいしい!」と言ってくれ、ほっと胸を撫で下ろす、みたいな。

下のクッキング・スクールの講師がなぜ赤ちゃんなのかは私にも謎です。

 2世紀近くも変わっていないというリー&ペリンズのレシピ。これだけ幅広く使えるなら、私も試してみなきゃですね。

そのうえ健康にもいいし、アウトドアでの食事にだって使える!

   

 前線の友人たちも、リー&ペリンズを送ってもらえば塹壕での食事が楽しめるようになるかも。(ってこれ、第一次大戦かな?誰も前線の塹壕で食事などしなくて済むようにするのが一番なんですが。)

 1876年7月26日、高等裁判所は「リー&ペリンズは『ウスターシャー・ソース』という語句を専用する権利を保持せず」との決定を下しました。その結果他メーカーによるウスター・ソースも出回りつづけることになったため、リー&ペリンズはオリジナリティーを強調し“ニセモノ”に惑わされないよう消費者の注意を喚起。

ライオネル・ブランド、ホルブルック、アーリーバード・ブランドのウスターシャー・ソース。

 下の3つはなんとなくラベルがリー&ペリンズに似ていると思いません?急いで買ったら間違えそう。でも発明から約180年後の今、我家の最寄のスーパーにはスーパー・ブランドを除けばリー&ペリンズしか残っていないところをみると、やっぱりリー&ペリンズ製が一番おいしかったということになるのでしょうね。

 

チーズ・オン・トーストに振りかけるだけではもったいない。今後はちょっと冒険してみようかな?リー&ペリンズのウスターシャー・ソースで。

ちなみに私は下戸なので知りませんでしたが、カクテルのブラディー・メリーはウォッカとトマトジュースとリー&ペリンズでできているそうです。ひとつ利口になりました。

 

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