今日の主要ニュースのひとつはこれ。
常識あるイギリス国民の軽蔑の対象となっているタブロイド紙 “ザ・サン” のすっぱ抜きである。
“HEIL HITLER” 式敬礼をしているから、
王室メンバーの敬称 (HIS / HER / THEIR) ROYAL HIGHNESS をもじって HEILNESS。
うまい! ザブトン一枚!
・・・ じゃないって!!
時は1933年。 スコットランドはバルモラル城の庭で、未来の国王エドワード8世に教えられ、
ナチス式敬礼をする彼の義妹(未来のエリザベス王妃)と二人の姪・エリザベス王女(現女王)とマーガレット王女。
その様子を撮影した短い映像が発見されたのだそうだ。
映像はこちら。
って~! 当時の王女たちは、7歳と3歳と考えられるそうで・・・ カンベンしてよ、と思う。
第二次世界大戦勃発前で、まだ誰もヒトラーがあそこまでやるとは知らなかった頃のことなのだから。
こんな82年前の映像や画像を、鬼の首を取ったような勢いで公表して・・・
それよりもっと大変なことが、世界各地で起きているでしょうがっ!
ナチス式敬礼は、1938年にベルリンのオリンピック・スタジアムでサッカー試合が行われた際、イギリス・チームもしたそうです(下右)。
ほんと、当時はまだ誰にも、ヒトラーとナチスの本質を見抜くことはできていなかったのだから。
それよりも、エドワード8世。 恋のために王冠を捨ててくれて本当に良かった。
親独派でヒトラーとも親しく、ウォリス・シンプソンと1937年5月に結婚後、10月にはヒトラーの招待を受けて、
英国政府の忠告を受け入れずにベルヒテスガーデンにあるヒトラーの別荘に滞在。
第二次世界大戦勃発後でさえ、親独的態度を隠そうとはしなかったそうだ。
そのうえ一説では1940年に、「ドイツが勝ったら自分が国王に返り咲く」 という条件で、
英国をドイツ側に寝返らせる方法を秘かに画策したとされている。
スペインの外交官に 「戦争の早期終結のためには英国を爆撃するべきだ」 と提案したとも言われている。
いっぽうヒトラーは、戦争では敵になってしまったものの、英国にはかねてから尊敬の念を抱いていたので、
占領後は英国を、エドワード8世を形だけ国王にしておいて、自由に操る目論見でいたそうだ。
父王ジョージ5世でさえ、その言動に振り回され国王としての資質に疑問を抱いていたというエドワード8世。
未来の国王として、幼い頃から帝王学をはじめとする教育をみっちり受けてきた人物とは信じられない。
エドワード8世が恋をあきらめて王位をキープしていたら、第二次世界大戦の行方はかなり変わっていたかもしれない。
それを思うと、シンプソン夫人にはいくら感謝してもし足りないな。
いっぽうエリザベス王女は、1944年に18歳になると女子国防軍に入隊し、軍用トラックを運転したり、
車両整備をしたりして活躍。
エドワード8世の退位により、思いがけず国王になってしまったジョージ6世。
その苦労は、映画 『英国王のスピーチ』 でもお馴染みである。
国王夫妻はカナダへの避難勧告を退け、ロンドンからも疎開しようとせず、国民の士気を鼓舞し続けた。
「国王がロンドンに留まっていられるなら、ロンドンはまだ大丈夫だ。」 とロンドン市民は安心していられたのである。
爆撃を受けた国内各地のみならず、外国の遠征部隊も慰問し励ました。
常に夫と行動を共にしたエリザベス王妃は、ヒトラーに 「ヨーロッパで最も危険な女性」 と言わせしめたそうである。
やがて迎えた戦勝
ジョージ6世の早逝により、25歳の若さで王位についたエリザベス女王と、
娘を見守りつつ歳を重ねていくクイーン・マザー。
2002年に101歳で逝去したクイーン・マザーは、国民に広く愛され親しまれる存在だった。
そして ・・・
“ザ・サン” のすっぱ抜きは、逆効果を招いたもよう。
「すばらしい! 世界にはすでに十分に憎悪が蔓延しているのに、こんな写真を使って
それを増幅させようというわけね。 よくできました。」
“ザ・サン” 紙を所有する News UK のトップのルパート・マードック ↓ が、反王制で有名なため。
「私が女王だったら、あの卑劣なルパート・マードックは二度とこの国に入らせないわ。」
「女王がナチス式敬礼をしたというニュースは、“ザ・サン” が卑しむべき人間に操られた、
卑しむべきメディア媒体であることの証拠だ。 買うのをやめよう。」
「7歳と3歳? そうね、もちろん彼女らは、自分たちが何をしているのか “知っていた” のよね・・・ For Fuck's Sake。」
「 “ザ・サン” を買わない理由があるとすれば、まさにこれがそうだ。」
私のイチオシは、“ザ・サン” という新聞紙名を “太陽” にひっかけているこれ ↓ 。 うまい!
「 “Their Royal Heilness” という見出しで女王が親ナチスだったとほのめかすことにより、
太陽(=“ザ・サン”紙)は新たなる低レベルに沈んだ。」
というわけで、英国民にはまだまだ冷静で客観的な判断力が残っているとわかり、胸をなでおろした私です。
ザマミロ、 “ザ・サン” め!