先月入ったニュース。
“ケンブリッジの男子高校生2名(ともに17歳)が、歴史教育の一環としてアウシュヴィッツを訪問中、
元囚人の所有物数点を盗もうとして捕まり、有罪となり、罰金刑を受けた” というもの。
ベン・トンプソン マーカス・デル

二人はガラス片ふたつ、ボタンふたつ、スプーンのかけら、バリカンの一部と思われるものを所持していたため、
逮捕され警察に連行された。

この事件のほんの3週間ほど前に、実際アウシュヴィッツにいた私。 ニュースを聞いたとき、
(元囚人の持ち物はすべて錠つきのケースに保管されているはずだけど・・・???) と脳内が疑問符でいっぱいになった。
でも続報を聞いて納得。 彼等はアウシュヴィッツⅠでなく、Ⅱのビルケナウの方にいたらしい。
3kmほど離れた、アウシュヴィッツⅠとⅡ。
レンガ造りの棟がそのまま残るⅠは、一部に写真や関連資料や元囚人の遺留品が展示されて博物館らしくなっているが、
あまりにも有名な “死の門” のあるⅡのビルケナウは、その広大さに圧倒されつつ、
バラックやクレマトリウムその他建造物の名残りを、自らの目で足で確かめる形式がとられている。
ナチスによって虐殺された人々の遺留品を貯蔵する倉庫は、“カナダ” と呼ばれていた。
“カナダ” には当時、豊かなイメージがあったためらしい。
遺留品の選別や仕分けや保管は比較的楽な仕事だったので、囚人は誰もがそこで働きたがった。
実際 “カナダ” で働いたため解放まで生き延びられたという人々もいた。
アウシュヴィッツⅠ近くの工場群の中にあったのが、“カナダⅠ”。
アウシュヴィッツⅡビルケナウの西端近くにあったのが、“カナダⅡ”。
(Ⅰで撮った下の写真は、上がほぼ西。 ちなみに “カナダⅠ” は非公開。)

カナダⅠでの選別作業 (Ⅰで撮った写真)

カナダⅡでの選別作業 (同上)

ビルケナウの BIIg 区域が、“カナダⅡ” 。
Warehouses for storing property plundered from people deported to Aushuwitz (“Canada Ⅱ”)
『アウシュヴィッツに送られた人々からの略奪品を貯蔵するための倉庫群(“カナダⅡ”)』


この道の先、左手に “ザウナ” の建物が見えている。 “カナダⅡ” はその反対側の右手。
(“ザウナ” =上の案内板のL・シャワー= については、長くなるのでまた今度。)

カナダⅡ の案内板

ピンクの ← で示されているのが、2枚前の写真にある鉄条網。 赤い● は、現在地。

“ BIIg 区域の一部 ―― ナチス親衛隊員撮影、1994年”

“ユダヤ人からの略奪品の選別作業(カナダⅡ倉庫の外にて) ―― ナチス親衛隊員撮影、1944年”

ナチスが証拠隠滅のため放った火により炎上する “カナダ” 。 (アウシュヴィッツⅠで撮影した写真。)

30もの倉庫が並んでいた BIIg 区域。 現在ここには、倉庫の残骸すら残っていない。 辛うじて土台が見えるだけ。

例の高校生二人は、第5倉庫跡で見つけたものを拾って監視員につかまったそうだ。
アウシュヴィッツの敷地内に存在するものを動かしたり取り除いたり破壊したりすることは、法律でかたく禁じられている。
訪問前に、学校側がそれをちゃんと生徒に説明していなかったとは考え難い。
(Visitor Regulations of the Auschwitz-Birkenau State Museum)
最初私は、二人が監視員の隙をついて保存ケースをこじ開けて展示品を盗もうとしたのかと思った。
だから 「カナダⅡの地面から拾ったものを盗もうとした」 と聞いて、ちょっと救われた気分になった。
それでもやっぱり、二人の行為は信じ難い。
アウシュヴィッツから何かを持ち帰ろうなどと思うこと自体、信じられない。
アウシュヴィッツで、しかもどこあろう “カナダ” で見つけた品は、まずそのすべてが犠牲者の遺品なのだから。
警察に拘束され、通訳つきで尋問され、オシフィエンチムの留置所で一晩過ごし、罪を認めた二人。
月曜日の午後に逮捕され、その日は潔白を主張していたが、翌火曜日は罪を認めたそうだ。
一年の保護観察と三年の執行猶予つきの刑を受け、それぞれが罰金1000PLN(≒¥33,000)を払って釈放された。
ベン・トンプソンの両親は、「息子はとても怖くショックな思いをした」 と述べた。
「若いときは、考えなしに行動してしまうものだ。 事の重大さを痛感している。
息子は自分の行為が愚かで無礼なものであったと理解しており、ポーランド社会に引き起こした不快感や怒りに対して
心の底から申し訳なく思っている。 おそらく息子は、(アウシュヴィッツで)見たり体験したりしたものの甚大さに影響され、
判断力を鈍らせたのではないか。 ベンは悪意も不敬の念も持たない子で、人々の気分を害したことを死ぬほど後悔している。」
・・・・・ 馬鹿か、この親!?
どこまで息子に甘けりゃ気が済むの!

学生って言ったって、9歳や10歳の子供じゃない。 17歳ですよ、17歳! 善悪の判断は、十分につく年齢です。
こんな息子をかばうような物言いをしたら、世間の反感を買うだけってわからないのかな。
私だったら、恥に身をすくめて 「私の育て方が間違っておりました云々・・・」 とひたすら低姿勢を貫くけどな。
まさに、この親にしてこの子あり。
ちなみにこの二人が通うのは、年間学費15,000ポンド(≒285万円)の私立校、
The Perse School ↓ だそうですよ。

今日の教訓: 「品格は、金では買えず。」
《 オマケ: 今日のおススメ小町はこれです。 ・・・ 救い難い勘違いオンナ ・・・
》
