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Channel: ハナママゴンの雑記帳
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旧友の訃報

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 週末ネットでニュースを見ていたオットーが、驚きのニュースを教えに来た。

中高校(11歳から16歳まで通った学校)で仲良しだった友人が、自殺したというニュースだ。

友人の名は、ティム・マスリング(Tim Masling、下左、下右は奥さんと)。 享年57歳。

 

ボウリングに似た競技スキットルズ (Skittles)が得意だった彼は愛好会に所属し、何度も賞を獲得したことがあるらしい。

(現在ではスキットルズは、もっぱらパブで愛好されるゲームのようだけど。)

  

 マスリング氏は中高校を卒業したあと、すぐにチェルトナムのGCHQ政府通信本部)に就職したという。

2003年頃に新しい本部ビルが完成し、その形から “ドーナツ” と呼ばれるようになったGCHQは、オットーが生まれ育ったチェルトナムの町にある。

 

 私はチェルトナム南郊の病院で働くので普段は近寄らないが、我家からまっすぐチェルトナムに買物に行く際は、

M5高速道路のJ11(J=ジャンクション=インターチェンジ)でM5を降りてタウン・センターに向かう途中でドーナツの脇を通る。

ドーナツからタウン・センターまでは、約2.5km。

 3億3700万ポンドをかけて建設されたという、高さ21m、外郭の直径183mの “ドーナツ”。

敷地全体の面積は71ヘクタールだそうだ。

 

外壁は外側も中庭に面する部分もガラス張りで、採光が良さそう。

 

           

 職員の憩いのため、中庭には意図的に緑が多いのだろう。

  

 建て直される前のGCHQはこんな感じだったらしい。

そういえば昔、脇を通りかかったとき、車の窓からバラックみたいな味気ない建物が見えていたのを覚えている。

以前はここだけでなく他にも小規模なGCHQの建物がチェルトナム北東部にあったが、建て直しを機会に一ヶ所にまとめられたそうだ。

 

ネットで拾った、建設中のドーナツの画像。 引越しには一年かかったそうだが、ナットク。 さぞかし大変だっただろうな~。

  

 

マスリング氏はオットーが中高時代に親しくしていた3人の友人のうちのひとりで、ある日マスリング氏の家に遊びに行ったオットーは、

彼に誘われて彼の父親が隠し飲んでいたお酒を悪ふざけで少し飲ませてもらった。 マスリング氏も飲んだが、オットーが

帰途についたときは彼は絶対に酔っていなかったという。 オットーは自転車で帰宅したが、少ししか飲まなかったので

自転車に乗るのに影響はなかった。 ところがその晩マスリング氏の父親からオットーの家に電話が。

マスリング氏が酔って歩けなくなっているという。 どうやらオットーが帰ったあとも飲み続けた彼は、

急性アルコール中毒で?一時的に下肢が麻痺してしまっていたらしい。 翌日彼は学校を休むようだったという。

おかげで飲酒がバレてしまい、オットーは両親にたっぷり絞られたそうだ。

 

オットーはマメな性質ではないので、マスリング氏を含む友人たちとは卒業後は音信不通になった。

私と出会う少し前・・・だから25年くらい 前、スーパーでばったり彼と会ったが、会話の流れで仕事の話になったら、

彼は 「仕事に関しては何も話せないんだ」 と不自然に会話を打ち切り、素気なくその場を立ち去ったそうだ。

GCHQの職員に厳格な守秘義務があるのは知っていたが、あまりにもぶっきらぼうな去り方に、しばらくは

(自分のせい?) (何か気に障ることを言ったかな?) と気になったという。

オットーが中高校を卒業後彼に会ったのは、そのときが最初で最後。

 

マスリング氏夫妻(右端)、左端は娘のローラさんと息子のマシューさんらしい。 中央は兄弟とその伴侶かと。

 

マスリング氏が自殺したのは半年前のことだが、なぜ今ニュースになったかというと、死因審問が終わったかららしい。

 

マスリング氏は今年6月16日(木)午後6時頃、在宅中に突然逮捕された。

「玄関の扉を開けたら警官が3人立っていました。 ティムは尋問のため連れて行かれて、真夜中過ぎに私が迎えに行きました。」

と、奥さんのデボラさん。

 

「次の日雇用主から電話があったし、警備部門はティムが彼らの助けが必要になるだろうと通達してきました。

ティムは前夜起きたことを詳しく説明しました。 自分の側の話を聞いてもらうため、できるだけ早くミーティングを

開いてもらいたがっていました。 でもミーティングが調整されることはありませんでした。」

 

デボラさんによると、マスリング氏の次の勤務日は19日(日)だったが、彼が出勤するとセキュリティー・パスは無効になっていて、

彼は建物内に入ることができなかった。 警備員にパスを見せると、車に戻って車内で待つように言われた。

彼が言われた通りにして待っていると、かなり長い間待たされたあとで警備員がやってきて、

“金曜日の警備部メンバーとのミーティング後、マスリング氏はGCHQに出入り禁止となった” ことを伝えた。

 

マスリング氏が20日(月)の朝一番でGCHQに状況説明を求めるため電話をかけると、

「彼らはとても弁解がましく聞こえました」 と、デボラさん。

検死官に当時のマスリング氏の精神状態を問われたデボラさんは答えた。

「彼についてなされた申し立てに関して、とてもポジティブでした。 我が身の潔白を証明することに意欲的でした。

最初から――逮捕された瞬間からそうでした。 すべてがシロだと証明されることを確信していました。」

 

その翌日も、マスリング氏はミーティングを求めて上司に連絡を取ったが、

「あれやこれやと理由をつけられて、それは不可能だと言われました。 彼は、誰一人として自分の話に耳を貸そうとしてくれないことに、

腹を立て始めていました。 それでも申し立ての結果に関しては、変わらずポジティブでした。」

 

その日GCHQの同僚――目撃者A――がマスリング氏に接触してきて、上司がマスリング氏の同僚たちに

彼が逮捕され、つづいて自宅待機状態に置かれたことを告げた。 マスリング氏は同日遅くに主治医に会い、

8週間の病欠証明をもらい、抗鬱剤を処方された。

 

「何度も何度も訴えたにも関わらず自分の側の話を聞いてもらえないことに、彼はますます苛立ってきていました。

でも自殺を願望するような言動は、私を含む家族の誰にも見せませんでした。 彼に同行して主治医に会いにも

行きましたが、自殺をほのめかすようなことは一度もありませんでした。」

 

7月1日の午前中、2人は近所のビストロに行ってコーヒーとケーキを注文し、週末の予定を話し合った。

月末にドイツにいる息子を訪問すること、また9月にクロアチアに行く計画についても話した。

2人は徒歩で帰宅し、そのあとマスリング氏はジムに、デボラさんは午後のボランティアの仕事に行った。

ジム・バッグを手に車に向かって歩くマスリング氏の姿が、デボラさんが見た彼の最後の生きた姿となった。

2人の最後の会話は、外出前の午後3時頃。 他愛ない5分ほどの会話で、マスリング氏は普段と変わらなかったという。

「じゃあまた5時頃ね」 と言うデボラさんに、彼は 「ああ、5時に」 と応えた。

 

デボラさんが帰宅したとき、マスリング氏がジムで使うタオルはあったものの、彼の姿はなかった。

彼の携帯電話に電話をしてみたが応答はなく、眠っているのかと思い2階に行ってみた。

マスリング氏が今回の出来事の詳細を記録するのに使っていたコンピューターの前を通りかかったのでキーのひとつに触れてみると、

遺書がスクリーン上に現れた。

 

「それは夫からの詳細な指示書でした。 私がするべきこととするべきでないことの。

信じられない思いで、また読み返しました。 信じられなかったものの、本当に起きていることだとわかっていました。」

デボラさんは近所に住む実父フランクさんに電話。 フランクさんはすぐに駆けつけてくれ、ガレージの中で

首を吊って死亡しているマスリング氏を発見した。

 

「夫は、皆を守らねばならないと感じたのだと思います・・・・・

死にたくはなかったけれど、置かれた状況には希望がないと思ったのでしょう。

精神的苦痛、私をも蝕みつつあると感じた苦痛を終わりにするため、死を選んだのです。」

 

審問では、警察に押収されたマスリング氏の私物が返却されたかについては明らかにされなかった。

マスリング氏に関してなされた申し立ての内容も公表されなかった。

マスリング氏の死は自殺と結論づけられた。

 

『家族は、証拠を伴わない申し立てがなされ、それに関して雇用主から何のサポートも得られなかったことが、

ティムを自殺に追い込んだのだと信じます。 これらのことがなかったら、ティムは今日も私たちと共にあったでしょう。』

という声明を、マスリング氏の死後、家族は発表した。

 

『ティム・マスリングはGCHQで、尊敬され愛される同僚であり友人でした。 ご家族に深いお悔やみを申し上げます。』

と、死因審問後にGCHQのスポークスマンは語った。

 

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ティーン時代のオットーの友達が、自殺だなんて・・・・・ でも私は、ご本人より家族に同情してしまう。

だって今後はご家族は、子や孫まで 「あの自殺したGCHQの・・・」 と陰で噂されることになるんですから。 本当に潔白だったなら、

ティムさんはとことん闘うべきだったのでは? こんな五里霧中のままで話を終わらされたら、(火のないところに煙は立たないから・・・)と

彼の潔白を信じない人も出てくるでしょうから。

とはいえ、GCHQはスパイの本部。 適当な証拠を捏造することなど、お手の物だったりするのかも。

第一、彼に関してどんな申し立てがなされたのかすら不明のままだし。

まさかまさか、自殺というのは、間違いない。 ・・・んですよね・・・!?

 

オットーと父親のお酒を盗み飲みした頃は、ティムさん、まさか自分が60歳の誕生日を迎えずに死ぬとは、

しかも自殺するとは、思いもしなかっただろうな・・・・・

GCHQに勤めることがなかったら、たぶんずっと長生きできたろうな・・・・・

 

ティム・マスリングさんのご冥福をお祈りします。

 

 

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