《 おことわり 》
① クソ野郎の義父がとうとう昇天しましたが、私は義父が故人になったからといって、語調を変えるつもりはありません。
その点を不快に感じられそうな方は、不快に感じ始めた時点で当ブログを閉じてくださいますようお願い申し上げます。
② 義父が逝くまでの経過をさくっとまとめるつもりでしたが、将来自分が読み返すときのために詳しい記録を残しておきたいので、
長ったらしい記事になりそうです。御用とお急ぎでない方のみ、お読みくださいませ。
《 ③からのつづき 》
10月22日(火)。サンライズ・ケアから約束されたメール(自動振込み申請用紙が添付されたもの)が前日のうちに届かなかったため、
オットー、まずサンライズ・ケアのマネージャーに催促のメールを発信。それから買物のサポートのため、義父母宅に行きました。
前日同様、居間には義母のみ。義父の姿は見えず、義父の寝室のドアは閉まっていました。
義母によると、オットーの到着を知るや否や、前日同様に義父は、慌しく寝室にこもったとのこと。
「それで、父さんは、キャッシュカードを出しておいてくれた?」
「いいえ、あなたが持っていると言ったわ。」
「俺はラップトップを(前週の金曜日に)使っていたときキャッシュカードをここに置いたまま帰ったから、
父さんはそのことで俺を責め立てるつもりだろうな。」
念のためテーブルに積み重ねられた書類や椅子のクッションの下やテーブル下を探すも、キャッシュカードは見当たらず。
オットー、義父の寝室に行くと、義父はベッドに横たわっていました。両手は組んで、頭の下。視線は反対方向に向けて。
「父さん、これから買物に行くんだけど、キャッシュカードが要る・・・」
「ここ何ヶ月も、お前に預けている!」
「そうだね。」
「ワシはその間ずっと、カードなんて目にしとらん。さあ、行って見つけろ!」
「俺はカードをテーブルの上に置いて・・・」
「見つけろ!」
「父さんのラップトップを使っていたとき、テーブルの上に残して帰った。」
「なら、今はどこにあるんだ?」
「父さんの財布じゃないか?」
「そうかね?」
(義父、自信たっぷりにオットーに財布を渡す。オットー、財布を開けずに)
「それか、父さんがどこかに隠したんだと思う。」
「ワシは何も隠しとらん・・・カードのことは何も知らん!お前に預けてから、カードを見たことはない。
今どこにあるんだ?言ってみろ!」
「銀行に電話するため、俺の財布から預かっていたカードを出して、・・・」
「そうだな!覚えているぞ!」
「・・・父さんが今みたいに怒鳴っていたから、俺は退散した・・・」
「お前はすべてを投げ出して行った!」
「そんなことはしていない、ただ・・・」
「投げ出した!」
「できるだけ早く辞去した。」
「そうかね、それで?」
「カードを置き忘れた。」
「なら、・・・カードをワシによこせ。」
「カードを置き忘れたことには、すぐに気がついた。」
「そうだろうな!」
「でも、もしかしたら・・・」
「カードをどこに置いたって?」
「黙って話をさせてくれないか?カードを置き忘れたことに気づいても戻ってこなかったのは、もう父さんのために買物に行くことは
ないかもしれないと思ったからだ。父さんがカードを隠すかもしれないとも考えた。そして父さんの財布が、テーブルの上から消えた。」
(オットー、義父の財布をベッドに置く。)
「ワシはカードを見とらんぞ!」
「父さんの財布が、同じタイミングで消えた。カードを渡してくれないなら、買物には行かないよ。わかるね?」
「ワシは・・・お前は・・・、お前の言っていることはわかる。」
「じゃあこれからはヘルパーさんに買物をしてもらうことになる。いいね?」
(義母、オロオロして) 「お父さん・・・オットーも・・・」
「もし父さんが気を変えたら、戻ってくるよ。」
「待って、オットー・・・お願いだから、待って。」
オットー、居間に戻る。義父、義母に怒鳴っている。
「ワシはカードなんて知らんぞ、見てもいない!保証する!」
(オットー、義母に) 「カードがどうなったのか俺にはわからないが、俺は確かに・・・」
(義父、ベッドに横たわったまま) 「ハハ、ハ・ハ!」
「・・・テーブルの上に置いていった。」
「『カードがどうなったか俺にはわからない』か!そうだろうよ!」
「わかってるわ・・・」
「父さんは、俺が財布を調べてくれと言うのを見越して、カードをどこか別の場所にしまって、カードの在り処を知らないふりを
しているんだと思う。俺はそう信じる。」
「わかったわ。」
「いいさいいさ、何でも好きなように言うがいいさ・・・」
「父さんはそこまでする人間だから。・・・買物がうまく行くよう祈るよ。」
「ね、オットー、・・・お願いだから・・・」
「いや、もうたくさんだ。父さんには付き合いきれない。父さんは俺に嘘をつき、母さんに嘘をつく。」
「わかってるわ・・・」
(義父、寝室から怒鳴る) 「『俺に嘘をつく』だと!はっ、よくも言えたもんだ!」
「もうたくさんだ。」
「ね、お願いだから、オットー・・・」
「これ以上は無理だ。悪いけど。おそらく父さんはカードをどこかに隠して、俺がぞんざいに扱ったせいでカードは
そこに行き着いたんだと言うだろう。でもカードは確かにテーブルの上にあった。」
「頼むから、ね、おねがい・・・」
「ごめん、でももう父さんとは付き合えない。帰るよ。」
「牛乳がもうないのよ、他のものだって・・・」
「タクシーを呼ぶか、明日ヘルパーさんに買物に行ってもらうかしてくれ。」
オットー、辞去。
オットーが車で5分の距離を帰宅する前に、義母から電話があり、私が出ました。義母によると、オットーが義両親の買物リストを
持ち去ってしまったとのこと。もちろんそう言い出したのは、明らかに義父でした。帰宅したオットーに義母からの電話について言うと、
オットーはコートのポケットや、持参した手帳や書類をチェック。念のため私もチェックしましたが、買物リストは見当たりませんでした。
オットー、義母に電話して、リストはテーブルの上のどこかにあるはずであること、また記憶力が低下している義母のために、リストの
大きさと形状を伝えました。義母はもう一度探してみて折り返し電話すると言いました。オットーと義母が通話中、義父は背景で
絶え間なく怒鳴っていました。内容までは聞き取れませんでしたが。
2分ほどして電話があり、義母はテーブルの上にあったリストを見つけたとのこと。リストには他の覚書もあったため、前に探したとき、
見落としてしまっていたのでした。
オットーは、サンライズ・ケアやソーシャル・サービスなど義父母に必要な連絡先のリストを作成し、プリントアウトしました。
それを持って車でふたたび義両親宅に行くと、義母は居間に、義父はキッチンにいました。連絡先の一覧表を、サンライズ・ケアや
グロスターシャー州にある高齢者養護施設を網羅したパンフレットなどとともにテーブルに置くと、義父にも聞こえていることを承知で、
義母に告げました。
「父さんに関する書類やパンフは、これで全部だ。今後は父さんは、自分に関することは自分で手配する。母さんが医者や病院に
行く必要があるときは、俺が連れて行く。でも父さんのことは連れて行かない。わかった?」
「え・・・え、・・・わかったわ。」
「ごめん、でも父さんの面倒は見られない。俺は父さんには役不足なんだ。どこで間違ったのかわからないけど・・・そういうことだ。
いいね?母さんに関しては、何でもするから。」
「オットー、・・・お願いだから・・・」
「この家を出たくなったら、どこかに身を寄せる必要ができたら、力になるから。」
オットー、ふたたび辞去。
「オットー、戻って来て・・・お願い・・・」
車に向かうオットーの耳に、ノンストップで義母に怒鳴る義父の怒声が聞こえていました。
帰宅したオットー、義父の主治医に電話。診療所の受付は、主治医は午後3時過ぎに折り返し電話するとオットーに告げました。
オットー、妹のジェインにメール。
ジェイン、父さんと全面対決した。父さんは、キャッシュカードを失くしたと言って俺を非難した。先週父さんが怒鳴るのをやめなかったとき、
俺は確かにカードを、テーブルの上に置いたまま退散した。父さんは俺にお灸をすえるためにカードを隠したと確信している。
俺は今後は父さんのサポートは一切しない。でも母さんのためならなんでもすることは、母さんに言ってある。
義父の主治医から、午後5時5分前に電話がありました。オットー、今後は義父のサポートはしないことを説明しました。義父が精神の均衡を
失いつつあり、被害妄想の気もあり、怒りをコントロールできず怒鳴るのをやめられず、まともな会話がもはや不可能であると。
義父の主治医は、それは医療上というより社会上の問題であり、義父は在宅介護が不可能な状態に入っているから、養護施設に
入所すべきだと示唆しました。でもオットーは、その決断は義父本人から出てこなければならないことを説明。施設に入所しても
そこに馴染めなければ、義父は絶対に入所を提案した人間に責任を被せて非難するからです。主治医は、家族が一致団結して
義父に入所をすすめるよう言いましたが、オットーには、それも得策とは思えませんでした。義父という人は、自分に不都合なことや
不満に思うことができれば、必ず誰かしら責める相手を見つけて理不尽に攻撃する人なので。
すると主治医は、どうしても義父が自主的に施設に入所しないなら、次のようにするようアドバイスをくれました。
義父が次にまた救急車の世話になる機会を待つ。救急車で病院搬送されたら、帰宅の許可が下りても、もう在宅介護は無理だと主張する。
そうして義父をコミュニティー・ホスピタルに転院させてもらい、ソーシャル・サービスを巻き込んで介護の必要度を査定してもらい、
適切な施設に入所させてもらう。・・・
最後に主治医は、義父のようなケースは今や珍しくない、よくあるものだと言って慰めてくれました。
オットーが義父の主治医との会話の内容をジェインにメールすると、間もなくジェインから電話がありました。オットーは、カードが原因で
義父との関係が決裂したため、義父のサポートは義父本人に返したことを説明。ジェインにも影響が及ぶことは必死なので、
謝罪もしました。ジェインは「翌日(水曜日)は仕事がないので、両親宅に行って二人と話してみる」とのことでした。
(我家は義両親宅から2kmの距離ですが、ウスターに住む義妹から義両親宅までは、車で片道小一時間かかります。
義妹は以前は小学校教師をしていましたが、2人の息子を出産後は、仕事量も責任もずっと軽い教師助手をパートで
務めています。)
その後はオットー、その日の義父との会話の録音内容を、何度も繰り返し聴いていました。
義父がカードをどうしたのか、カードについて本当に何も知らなかったのかを、突き止めようとして。
夕食後、ムスメと私もじっくり聴かせてもらいました。
「父さん、これから買物に行くんだけど、キャッシュカードが要る・・・」
- オットーの口調は普通で、何か問題がある気配はない。
「ここ何ヶ月も、お前に預けている!」
- 義父、即座に怒っている。声は大きく、緊張していて高い。何故?
「そうだね。」
「ワシはその間ずっと、カードなんて目にしとらん。さあ、行って見つけろ!」
- カードが紛失していると、何故義父は知っている?オットーは単に「カードを家に忘れてきた」というつもりだったかもしれないのに?
義父がカードの在り処を知っているはずだなどとも、オットーは言っていないのに、何故怒る?
「俺はカードをテーブルの上に置いて・・・」
「見つけろ!」
- オットーに最後まで言わせず、大きな自信に満ちた声で口をはさむ。オットーがカードを見つけられないとわかっている?
「父さんのラップトップを使っていたとき、テーブルの上に残して帰った。」
「なら、今はどこにあるんだ?」
- 口調はやや落ち着いたが、変わらず自信に満ちている。オットーがカードを見つけられないことを確信している様子。
「父さんの財布じゃないか?」
- 義父に「こう言うのは早すぎた」とオットー。
「そうかね?」
- 潔白を装った、静かな声。オットーは、カードは義父の財布にはないことを確信。
(義父、自信たっぷりにオットーに財布を渡す。オットー、財布を開けずに)
「それか、父さんがどこかに隠したんだと思う。」
- 「これも言うべきじゃなかった」とオットー。しかしながら、義父がカードの在り処を知っていると、さらに確信。
「ワシは何も隠しとらん・・・カードのことは何も知らん!お前に預けてから、カードを見たことはない。
今どこにあるんだ?言ってみろ!」
- オットーに「隠した」と非難されたため、義父、カードの在り処を知らないと、重ねて否定。これで後戻りできなくなった。
(中略)
「・・・カードを置き忘れたことに気づいても戻ってこなかったのは、もう父さんのために買物に行くことはないかもしれないと
思ったからだ。父さんがカードを隠すかもしれないとも考えた。そして父さんの財布が、テーブルの上から消えた。」
(オットー、義父の財布をベッドに置く。)
「ワシはカードを見とらんぞ!」
- 変わらず自信たっぷりの大声で、自分の言ったことに固執している。
「父さんの財布が、同じタイミングで消えた。カードを渡してくれないなら、買物には行かないよ。わかるね?」
「ワシは・・・お前は・・・、お前の言っていることはわかる。」
- 声の調子が完全に変わる。高く、弱く、どもった、力を失った声。予想していなかった不都合な展開に、
態勢を立て直そうとしている様子。
「じゃあこれからはヘルパーさんに買物をしてもらうことになる。いいね?」
- それまでと相反して、すぐには答えず。
(義母、オロオロして) 「お父さん・・・オットーも・・・」
「もし父さんが気を変えたら、戻ってくるよ。」
- 義父、無言。
「待って、オットー・・・お願いだから、待って。」
義父は、カードの在り処を知っていた。というのが、義父の言葉や声の調子から判断した、私たちの結論でした。
オットーは、自分が父親を早すぎる段階で強く非難してしまったことを自覚しましたが、義父の方も、それに抗ってカードの在り処を
知らないことを何度も強く否認したため、後戻りできなくなったのです。
オットーは、カードは翌日のジェインの訪問中に、義父母宅のどこか――おそらく居間――で見つかるだろうと、推測しました。
オットーは義弟②にも電話し、その日の出来事を報告しました。オットーは義弟②に、今回のことで義父とオットーのどちらに非があったのかは、
もはや問題ではないと告げました。義父とオットーがうまくやれない以上、関わりを絶つしかないと。そのあとはいつものように、
義父の信じ難い人格や、義母が未だに義父と一緒にいる不思議や、今後予測される展開や二人のケア・オプションや、
いったいなぜ義父には誰がどう尽くしても不満足な結果にしか終わらないのかなどについて、話をしたそうです。
オットーには弟が二人、妹が一人います。上の弟――義弟①――は奥さんともども教師で、私がオットーと出会う前の年、1991年から、
ずっと外国暮らしをしています。毎年夏休みとクリスマスに帰国しますが、義両親に会いに来るのは2ヶ月以上ある夏休み中に4~5日程度、
クリスマス時は来ないことも多いです。二人はイングランド北部のダーラム、義弟①奥さんの実家近くに家を持っていて、義両親宅までは
車で6時間くらいかかるので、まぁ無理もないかもしれません。実を言うと二人は、以前はチェルトナムに家を持っていたんです。
でも10年くらい前にその家を売り、ダーラムに家を買いました。その理由は、義弟①夫婦は、義両親よりも義弟①の奥さんの両親との方が
気が合うから・・・と、私は確信しています。そしてそれを責めるつもりは毛頭ありません。当然の選択だと思うので。
義弟②は独身で、車で片道3時間半ほど離れた大学町ケンブリッジ郊外に住んでおり、年に3~4回は義両親宅に3~7日ほど
泊まりに来ます。義父は『外部の人間』には愛想よくできるので、義弟②が到着すると、最初の2日くらいは普通に会話します。
でも義父の機嫌がもつのはそこまで。2日を過ぎると義弟②はもはや内部の人間なので、義父は議論をふっかけてくるようになり、
それが口喧嘩に発展することもしばしば。面白くないとむっつりと押し黙り、些細なことで言いがかりをつけ、八つ当たりで義母に怒鳴り散らし・・・。
それを繰り返し経験してきた義弟②なので、義父の信じられないような性格も振舞いも、義弟①よりもはるかにずっと、そしてひょっとしたら
オットーよりも、身に沁みてわかっているのでした。
《 ⑤につづく 》