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Channel: ハナママゴンの雑記帳
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死刑囚の兄と、・・・

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古今東西の優れた文学作品には興味が沸かず、もっぱら推理小説を読んで成長した私。

今でも相変わらず犯罪事件への関心が高く、その関係のTV番組を好んで視聴しています。

先日見た番組がとくに印象に残ったので、今回はその事件プラスαについて書くことにします(本文中は敬称略)。

 

《 警告: この記事は、残忍で猟奇的な殺人の描写を含みます 》

 

*       *       *

 

米カリフォルニア州、ヨセミテ国立公園

 

1999年2月14日、キャロル・サンド(42歳)は、娘のジュリ(15歳)とアルゼンチンから交換留学中だったシルヴィーナ・ペロッソ(16歳)を伴い、

ヨセミテ西部に位置するシーダー・ロッジに到着した。

 

翌2月15日、ヨセミテを訪れ自然美を満喫する3人の姿が目撃された。その晩三人はロッジのライブラリーから、部屋で見るため二本の

ビデオを借りた。それを最後に、三人はぷっつり姿を消してしまう。

16日の朝スタッフが掃除のため部屋に入ると、部屋におかしな点は何もなく、キーは机の上に残されていた。

チェックアウトはすでに済んでいたため、スタッフは三人はロッジを発ったものと解釈した。

キャロルの夫ジェンズは出張の準備があったためヨセミテに同行できなかったが、16日の晩三人とサンフランシスコ空港で落ち合い、

皆で一緒にアリゾナに飛ぶことになっていた。ジェンズが出張先で仕事中は、三人はグランド・キャニオンを観光できるから。

三人とサンフランシスコで会えなかったジェンズは、三人は先にアリゾナに飛んだものと解釈した。が、翌日になっても

キャロルから何の音沙汰もなかったため、彼は警察に、三人の行方不明を届け出た。

キャロルがサンフランシスコ空港で借りていたレンタカーは返却されておらず、期限延長の連絡もなかった。

考えられる可能性は三つ。

車で事故を起こし、たとえば人目につかない渓谷にでも転落しているか。

ヨセミテをハイキングしていて道に迷い、遭難したか。

あるいは何か事件に巻き込まれたか。

懸命の捜索にもかかわらず、三人も、車も、なかなか発見されなかった。

 

三人が消息を断ってから一ヶ月以上経った、3月18日の夕刻。

シーダー・ロッジから130km近く離れた山中で、焼け焦げた車が発見され、ナンバープレートからキャロル・サンドが借りていたレンタカーと判明した。

車のトランクには黒焦げになったふたつの遺体があり、歯型からキャロル・サンドとシルヴィーナ・ペロッソのものと確認された。

 

全力をあげてのジュリ・サンドの捜索が続く中、車の発見から一週間ほど経って、警察に差出人不明のメモが届いた。

「この娘とは楽しんだぜ」と書かれたメモには、ジュリの遺体の位置を示唆する簡単な地図が描かれていた。

主語がWeと複数形になっているのは、捜査を撹乱させるためと後日判明。

(Vista Pointはビューポイントを意味するようです。下にグーグル・マップを拝借しておきます。マーセドは、のちに捕まる犯人の生まれ故郷。)

 

地図を参考に嗅覚探知犬を使って捜索したところ、貯水湖にほど近い茂みの中で、喉を搔き切られたジュリの遺体が、3月25日に発見された。

赤色のレンタカーを人目につかないような道を通って運転したうえ、大型家電や家具などの不法投棄以外の目的ではめったに入り込む人も

ないような場所に遺体を隠したレンタカーを遺棄したことから、犯人はヨセミテとその周辺の地理に詳しい人間と思われた。

 

犯人の手がかりは少なく捜査は難航したが、警察とFBIはその地域の前科者を調べ上げ、暴力性の高い数人を拘束し、6月末には

「シーダー・ロッジから行方不明になっていた三女性を殺害した犯人は、すでに拘束されているものと考えられる」と発表した。

地域住民は安堵で胸を撫で下ろし、ヨセミテは夏の観光客で賑わいはじめた。

 

ジョーイー・アームストロング(26歳)はヨセミテ国立公園のスタッフの一員で、ヨセミテを訪れる子供たちの教育活動に携わっていた。

公園内にあるキャビンで、恋人マイケルともう一人との三人で暮らしていたが、7月21日はたまたま一人だった。

友人とトレッキングに行く約束があった彼女は、しかし、約束の時間になっても姿を現さなかった。

 

翌7月22日。友人が警察に届け出、警察がキャビンを訪れた。

ジョーイーの姿はなく、キャビンの前には荷物が積み込まれて出発準備が整った状態の彼女の車が残されていた。

キャビン内部には争ったような形跡があった。ジョーイーの捜索が開始された。

キャビン近隣の森が手分けして捜索され、しばらくしてあるグループが、小川に横たわる、首を切断された女性の遺体を発見した。

遺体は白いTシャツとジーンズ姿で、彼女の頭部は12mほど離れた場所で発見された。

 

今回は、手がかりがあった。

ヨセミテ公園のスタッフが、ジョーイーが殺害された晩、彼女のキャビンの外に青と白のインターナショナル・スカウト(←車種)が

止まっているのを目撃していた。

シーダー・ロッジでパートタイムの雑用係として働くケイリー・ステイナー(37歳)が同種の車を運転していたため、取調べを受けた。

彼は、ジョーイーのみならずシーダー・ロッジの三女性の殺害をも自供した。

     

    

 

ケイリー・ステイナーは、1961年8月に、5人兄弟の長男として誕生。ヨセミテ国立公園にほど近いマーセドで生まれ育った。

彼は7歳くらいの幼い頃から女性を殺したい誘惑に駆られ、母親と店に行くと、その店の女性客全員を撃ち殺して店に火を放つことを夢想したという。

 

シーダー・ロッジから三人が行方不明になったとき、ロッジの従業員として、ケイリーも事情聴取されていた。

が、暴力行為の過去も前科もなかった彼は、容疑者にはならなかった。

自供によると、サンド母娘とシルヴィーナの三人は、もともとの標的ではなかった。

彼は当時シーダー・ロッジでウェイトレスをしていた女性と付き合っていて、彼女とその幼い二人の娘を殺害するつもりだった。

ある晩彼は、いよいよ殺害を実行に移すつもりで彼女を訪れた。が、思いがけない来客があったため、実行を見合わせてロッジに戻らざるを得なかった。

2月のシーダー・ロッジには宿泊客は少なく、サンド母娘たちの部屋の外を通りかかったとき、男性はいないらしいことが見てとれた。

その晩ケイリーは三人の部屋をノックし、水漏れの修理が必要なので部屋に入れてくれるよう頼んだ。

キャロルは最初は断ったものの、ケイリーに説得されてしぶしぶ彼を部屋に入れた。

二人の少女は居間でビデオを見ていた。

ケイリーは銃を突きつけて少女たちをバスルームに閉じ込め、まずキャロルを絞殺。死体を彼女のレンタカーのトランクに隠した。

それから居間で、ジュリとシルヴィーナをレイプした。

シルヴィーナが声高く泣き叫びつづけたため、彼女をバスルームに追い込んでバスタブ内に膝まづかせ、絞殺した。

ケイリーはその後の数時間、ジュリへの性的暴行を続けた。

朝になる前にシルヴィーナの死体もレンタカーのトランクに詰め込み、部屋を片付けると、ジュリを助手席に乗せ、

レンタカーでロッジを離れ、ドン・ペドロ貯水湖方面に向かった。

ピンクの毛布に包んだジュリを車から下ろしてもう一度レイプし、彼女の喉を搔き切った。

彼女はケイリーに、『ひと思いに殺して』を意味するジェスチャーを見せたという。

彼女がこと切れると、死体を茂みに隠し、少しばかり車を走らせたあと、辺鄙な地点にレンタカーを遺棄した。

数マイル歩いて近隣の村にたどり着き、タクシーを呼んでシーダー・ロッジに戻った。

数日後レンタカーに戻り、火を放った。

 

下の2画像: 現場検証に立ち会うケイリー・ステイナー

 

 

ジョーイー・アームストロングの殺害は、偶然の産物だったという。

殺人の衝動がふたたび高まっていたケイリーは、ロープ・拳銃・テープ・大型ナイフなどを詰め込んだバックパックを常時持ち歩いていた。

ジョーイーのキャビンの前を車で通りかかったとき、彼女が一人らしいことに気づき、話しかけたあと

銃を突きつけてキャビン内の寝室まで歩かせ、ロープで縛って自由を奪い、テープで口を塞いだ。

彼女を自分の車に押し込みキャビンを離れたが、心身ともに強靭なジョーイーは、スピードが落ちた瞬間を狙って

車の窓から(“助手席のドアを開けて”とする情報源もあります)車外へと脱出。死に物狂いで森の中を走り出した。

が、縛られていたため思うように走れず、ケイリーに捕まってしまった。

ジョーイーの予測外の行動にパニックしたケイリーは、ナイフで彼女の首に何度も切りつけ、首を切断。

遺体と頭部をその場に打ち棄てると、現場から逃げ出した。

 

2002年に4件の殺人で有罪になり死刑判決を受けたケイリーは、現在も死刑囚として収監されている。

彼の父方の伯父は、1990年に自宅で何者かに銃で撃たれて殺害された。ケイリーは当時その伯父と同居していた。

伯父が撃たれたときは仕事に行っていたとアリバイを主張した。

ヨセミテの殺人で告発されたあと、彼は幼い頃、銃殺された伯父に性的虐待を受けていたと申し立てた。

(そんな伯父と成人してから同居したのはなぜ?という疑問が生じますが。)

ケイリーは4女性の殺害を告白したあとでも、伯父の殺害については潔白を主張したという。

 

          

 

*       *      *

 

下は、事件後に遺族から公開されたという、サンド母娘のカメラに残っていた写真です。

ヨセミテ公園観光を楽しむ、人生まだこれからという少女たち・・・。

 

下の二枚は、事件が起きる20分ほど前に撮影されたと考えられているそうです

寝室でくつろぐキャロルさん、シルヴィーナさんと、逆立ちをしてみせるジュリさん。

身に迫る『凶悪』になど、まったく気づくことなく・・・。

    

 

宿泊に選んだロッジの従業員が、殺意をもって部屋を訪れてくるなど、誰が想像できたでしょう。

私が三人のうちの一人だったとしても、被害者になるのを回避することはできなかったことでしょう。

ケイリーの当初の殺人の標的は、当時付き合っていた女性とその幼い娘たちということでした。

もしその女性のところに不意の来客がなかったら、被害者になっていたのはその女性母娘であり、

サンド母娘たちは、予定通りサンフランシスコ空港でサンド氏と落ち合い、アリゾナに飛べていたはずで・・・

悪はどこでいつ牙をむいて襲いかかってくるかわからず、ほんと人生、一寸先は闇ですね。

皆さん、お互い常にアンテナを張って、警戒心を忘れないよう気をつけましょうね!

 

犠牲になった4人の女性の、ご冥福を祈ります。・・・・・

 

・・・英雄の弟につづく 》

 


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